感動受注経営学校

第23回 設計者選定方式について

2006年03月02日

● 設計者選定は「特命によるべき」という日本建築家協会をはじめ職能団体に所属する建築家の主張だ。しかし,現実的には特命で選べるだけの情報を発注者が持ち合わせているとは限らないし,透明性がないとの批判を受けてしまう。だから結局は,コンペやプロポーザルで選ぶことになる。

● コンペやプロポーザルも含めて投計者選定には,完璧な方法などあり得ないと思う。いずれも何かしらの欠点を持っているということだ。どの方法も完全ではないのであり,それぞれの欠点を認識したうえで,いずれの方法を探るかを考えなければいけない。プロジェクトごとにふさわしい方法をその都度考えることが大切だ。それを,一律にコンペやプロポーザル、入札という具合に決めてしまうことに問題があると思う。
 
● プロポーザルでの設計者負担の問題も解決しにくい問題だ。確かにプロポーザルでは実績や設計体制,コンセプトといった文章だけで審査する方法もある。ただ,実績や設計体制の評価にばかり重点が置かれてしまうと、大きな組織設計事務所が有利になり,小事務所や若手にチャンスが与えられない。当社は小事務所ではあるが15年前から、プロジェクト・マネージメント(PM)に取り組み、どんなプロジェクトでも一流の専門家と協同で仕事が出来る体制を作っている。ただし相当な費用は掛かる。特命で設計者を選ぶときでも同じ問題はある。コンペには登竜門という機能もあることを忘れてはならない。

● また,計画に対する考え方を示すといった文章は,これまでの審査経験からすると,内容にあまり差が見られない場合が多い。コンセプトを形にする能力が建築家に求められる職能とも言える。だから結局,簡単なスケッチを求めることになるが,応募条件で制限しても、多くの設計者は与えられた時間をフルに使って、デザインを考え、模型を作ったり透視図をたくさん描いてしまう。これが設計者のサガ〈性〉であり心だ。

● 参加報酬の額を上げるべきだとの意見もあるが,公共建築の予算は市民の税金から負担しているのだから,必ずしも良いこととは言えない。本当に負担を軽減させるなら,提出までの期間を短くすることが考えられるが、そうすると提案内容の質が低下してしまう恐れがある。民間の場合は、設計者を決めるのに大きな仕事でない場合は多額な予算を組めないと言う現実もある。

● いまだ解決されていない問題も多い。バランスの良い審査員構成,スケッチ程度の図と提出物を規定した場合の表現の程度,条件を尽くした案に対する措置などだ。審査経過の公表も現在行われているような「講評」だけでは少々生ぬるい。

● コンペ結果で最優秀だけか恵まれ,2位以下の努力や研究成果が報われないのも問題だ。たとえ最優秀ではなくても、その結果を正当に評価し,コンペが実績にカウントされるようなシステムをつくるべきではないか。案の作成には膨大なエネルギーがかけられているのだから,それを生かしていく方法が必要だろう。当社は通常のコンペに応募する場合500~800万円掛けている。落選すると経営的にピンチになることも多い。

● 審査員は質の高い建築をつくるために務めているのだから,場合によっては「該当者なし」という審査結果もあり得ることを,主催者に認めてもらいたい。また、審査員の責任は非常に大きいのだから,相応の報酬を支払うことも必要だと思う。こうした役割に対して発注者が報酬を支払うことも必要になる。現状では責任ばかりが大きく報酬が少なすぎる例も少なくない。民間の場合は結局、コネや利害関係の強い設計者、あるいは工事予算金額を低く提示する者が選ばれる事が多い。これは公平性を書くと言わざるを得ない。姉歯事件以降、第三者性が重視され建築主の立場に立って、監理をしっかりやる設計者が選ばれるようになったが、これは望ましいことと思う。建設会社の下請けをやるような設計者では本末転倒である。


 いずれにしても設計者選定については,批判を受けないようにするための形式だけが重要視されていて,いい建築をつくろうという意識が薄れているように思える。問題を整理して、少しでも正当な実力ある設計者が選ばれるようにすることが大切だ。当社も常に前向きに問題提起を続けている。

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(株)山本富士雄設計事務所
 代表取締役所長 山本富士雄

経  歴:1959年3月~1972年11月
      (株)三座建築事務所大阪支社及び東京本社にて、集合住宅、電話局、病院、オフィス
      ビル、個人住宅等の設計監理に携わる
      1972年11月 山本富士雄設計事務所設立
      1979年9月 株式会社に組織変更し、代表取締役所長として現在に至

社会活動:〔社)日本建築家協会関東甲信越支部西東京地域会会長として、2001年4月より2
      003年3月まで、西東京地域の住民を対象に「グリーンモール運動」等の活動を行った
      (現在副会長)

感想・ご意見 architect@f-yamafuji.com
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