第12回 『情報過剰時代のクレーム対処方法』
「2階のバルコニーから雨漏りして1階のソファーがびしょ濡れになった。」
どうしてくれると建築主から電話があった。すぐ出向いて処理をしたのだが,ソファーも布生地を張り替たのに,腹の虫が納まらないといってなんとホームページに書かれてしまった」と某工務店の社長から聞いた。「今時の建て主は我慢しませんからね」と慰めながらも「社名だけは公表しないで下さいと御願いした方がよい、会社のイメージダウンは避けられませんね」とアドバイスした。
プロであるわれわれ設計者や建設会社を信用しないドライな建て主が多くなったのは確かである。インターネットで住宅検査会社を見つけて住宅の基礎の鉄筋をチェックさせる顧客もいると聞く。あふれかえる情報に惑わされて疑心暗鬼になっている建て主がいる。
シックハウス症候群に対しても私共も相当に配慮を重ねて,設計・監理に当たっているが、クレーマー顧客の勉強振りは驚くほどである。
専門家たる者、なまじっかな知識経験では顧客に納得して頂けない。ひたすら学び、分からない事は正直に分からないと言い、ひたすら誠意を示す事が肝要である。
話し合いを十分にしない内に、ある日突然建て主が変身し,内容証明郵便で契約解除されたと言う話も聞いた。工事費が2割近く予定価格を上回ってしまい、懸命に値を下げる検討を繰り返していた最中なのに、と某工務店の専務から聞いた。設計施工の小住宅の話である。
建築にお客様のクレームはつきものである。クレームには設計者側に起因するものと施工者側に起因するもと、どちらにも原因があるものと3つに分けることができる。お客のミスや勘違いによるものもたまにはある。
品確法の施行でお客の建築に対する意識が変わり、ちょっとしたことでクレームとなるケースも見られる。実際にクレームが起きたらどう対処するか、トラブルにならぬよう未然に防ぐ手立てはないのか、それらをしっかりと認識しておかなければならない。
クレーム対策6つの留意点
1・逃げるな!クレームをチャンスに生かせ【ピンチこそチャンスだ】
クレームへの対処の仕方でお客に誠意を示せば、お客は感動を見直してくれる。
クレームが起きたときの誠意と謙虚な姿勢を持つことが大事なのだ。
クレームからは絶対に逃げない無い事が肝要である。放置しておくとかえって問題がこじ
れてくる。クレーム処理は重要な仕事の一つと思えば逃げずに対処できる。きちんとした
筋を通して問題点を指摘する「筋論クレーマー」には誠意を示すことが肝心である。
2・まずお客の言い分を聞こう,時には素直に謝ろう
「どういうことでしょうか」と先ず、お客や関係者の話を良く聞くことが基本。言い分を良く聞いて事実を正しく掴まないと対処できない。
その時は、自己の視点・会社組織の視点ではなく、ユーザーの視点・社会の視点でものを見,考えよう。「申し訳ありませんでした」こちらに問題があれば、途中で弁解したり、言い訳したりすることは止めよう。感情的になっては解決できる話もこじれて来る。1件の背後に100件のクレームがあると思ったほうが良い。
また、こちらに落ち度がなく、お客に間違いや誤解があったとしても、お客の気分を悪くしたことに対して申し訳なかったという気持ちをまず示そう。
情報はありのまま開示して、何事も隠さず、ウソをつかず迅速・適切に行動しなければならない。
3・主張すべきことはきちんと伝えよう
こちらが正しく、クレームが不当な場合は毅然たる態度でのぞむべきだ。相手の言い分をまず聞いて、そのあとこちらの言い分をきちんと伝える[イエス・バット法]の話し方を使うと良い。
品確法に絡む問題で、こちらに落ち度はないのに代金を支払ってくれないといったトラブルの場合は[住宅紛争処理機関]に申し立てて解決を図る。ただし、正規の性能表示評価をしていない場合は別の機関が相談相手である。
4・迅速と誠意で対処しよう
いたずらに時間をかけ過ぎたり、いい加減な対応をしたりするとお客の気分をこじらせトラブルに発展する。迅速と誠意を心掛けて対処するのが鉄則である。
ケースによっては担当者だけに任せず、トップが表に出ることも必要になる。
5・二度と同じ事が起きぬよう注意せよ
クレームは人為的なミスによるものか、技術上の問題か、管理や組織の問題か、はっきりとさせ、再び同じことが起きぬよう社内やチーム内に徹底する。いずれにしろ、クレームへの対応ぶりがお客への本当の姿勢であると見られるのだ。人は起こした事で非難されるのではなく、それにどう対応したかで評価されるのだ。
6・まとめ
不信の時代だからこそ信頼が大事だと痛感する。契約で責任分担を明確にする事が大事である。設計者の責任なのか,監理者の責任なのか、施工者の責任なのかを分厚い契約書で最初からはっきりさせておく事が肝心である。アメリカの工事契約書が参考になるだろう。多民族国家の米国と違って、日本はまだまだ契約に関しては甘いしルーズである。裁判で物を言うのは「マメな記録」と言う確かな証拠である。全てのクレームは文書で保存し手置かなくてはならない。様々な方法で顧客満足を向上させ争いの芽をつんでおく事が必要である。
最後は「日本人的誠意」であり信頼関係の構築できない相手と仕事をするのは不幸と言わなければならない。
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(株)山本富士雄設計事務所
代表取締役所長 山本富士雄
経 歴:1959年3月~1972年11月
(株)三座建築事務所大阪支社及び東京本社にて、集合住宅、電話局、病院、オフィス
ビル、個人住宅等の設計監理に携わる
1972年11月 山本富士雄設計事務所設立
1979年9月 株式会社に組織変更し、代表取締役所長として現在に至る
社会活動:〔社)日本建築家協会関東甲信越支部西東京地域会会長として、2001年4月より2
003年3月まで、西東京地域の住民を対象に「グリーンモール運動」等の活動を行った
(現在副会長)
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